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土地活用で定期借地を検討するときのポイント

2023.12.28

2021年に東京お台場において、賑わいの軸のひとつとされてきた「大江戸温泉物語」が閉館しました。

事業用定期借地の更新が叶わず、更地にして東京都に返却することが求められたというニュースになりました。

このニュースの根本となる取引形態が定期借地権です。

翻って定期借地は、土地活用を考える不動産投資家にとっても、とても興味深いものといえます。

 
 

普通借地と定期借地の違い

土地所有者が第三者に土地を貸すとき、普通借地定期借地というふたつの種類が存在します。

両者が大きく異なるのは、土地契約が終了した際に、借地人(土地を借りている人)の権利がどこまで強いかで変わるものです。

 

まず普通借地とは、借地人(土地を借りている)の権利が強く守られています

土地オーナーから契約を解除するためには、正当事由を必要として、オーナー側は莫大な立ち退き料を支払う必要があります。

法律制定時には農業従事者が多く、地主から土地を借りて農業で生計を立てる人が多い背景がありました。

立場の弱い借地人を守るために、借地人有利とする法律が制定されました。

 

一方の定期借地は、土地の貸し借り双方で定められている契約期間の満了時に、確定的に契約が終了し、土地が戻ってきます。

オーナー側が契約期間延長を認めれば延長は可能ですが、実務上は認められずに契約期間終了となるケースが多いです。

 

記事で紹介した大江戸温泉物語は、貸す立場が東京都というケースでした。

厳密にこのケースは事業用定期借地権といい、通常の定期借地権とは存続期間や居住用は不可などの条件があります。

 
 

土地オーナーにとっての定期借地権

普通借地がオーナーにとって不利という考え方は従来からあり、定期借地に興味を持っている土地オーナーも増えてきているようです。

具体的にどのようなケースが考えられるのでしょうか。

 

子世代は土地活用を自分たちで決めて欲しい

モデルケースは土地オーナーが現在50代で、将来土地所有権を承継する予定の子どもが20代から30代の場合です。

事業用定期借地として10年以上30年前後の定期借地を設定すると、自分の代は定期借地で貸し出して安定収益を期待できるものの、子どもの代になれば関係をリセットして、再び土地活用を検討できる仕組みです。

 

いま安定収益を最も期待できる事業(ビジネスモデル)が、30年後も必ず収益が期待できるとは限りません。

一例として、ロードサイド(郊外)のドライバー向け店舗が挙げられます。

 

 30年後には誰も車を運転することはない?

30年後どころか、10年後には自動車においてドライバーの必要が無くなり、自動運転に変わるといわれています。

自動車のみならず、明治時代にはじまった交通インフラの視点からも大きな社会転換です。

走る燃料が必要な以上、現在のガソリンスタンドが一気に無くなることは考えられないでしょう(水素などに変わる可能性は十分にあります)。

 

最も考えられるのは、ドライバーの休憩を目的とする施設の変遷です

ドライバーが不要となれば、より長期的な移動が可能となるでしょう。

ロードサイドの食事処がまったく必要ならなくはなりませんが、大きくニーズの変わるものと考えられます

 

また見逃せないのが、自家用車ではなくタクシーやトラックなど職業としてのドライバー事情の変遷です。

長距離移動を前提とする場合の多いこれらの職業のために、休憩処などが民間・自治体ともに整備されています

 

現在ニーズがあるからと定期借地で貸し出し、万が一ビジネスモデルが段階的にでも継続しなくなったときに、「充分な収益が期待できないのなら返してください」としても、想定通りにいかないものが土地の貸し借りです。

ならば貸し借り事態に敢えて期限を定めることで、将来のリスクヘッジを軽減することができるでしょう。

 
 

定期借地契約には特約を含めて専門家の知見を

定期借地で留意すべき点は返却期限だけではありません。

実際に定期借地契約を締結したものの、土地オーナーから見てノウハウが不足しており、思わぬリスクを抱えてしまったという話はよく耳にします。

対策としては、定期借地に詳しい専門家の知見に頼ることでしょう。

 

定期借地にはさまざまな特約を締結することができます。

更新の可否や、建物再築に関する条件です。

契約期間が終了した際に建築している建物をどうするかという、建物買取請求権についての記載も必要です。

これらは最初の定期借地契約の段階で、考えられるリスクを予測し、対策を積み上げておくものといえるでしょう。

 

定期借地は長期間におよぶ商取引です。

齟齬や懸念のある状態で、10年も20年も取引関係を継続するのは、土地オーナーにとって大きなストレスとなるでしょう。

子世代を巻き込む話でもあるため、契約時に可能な限りのリスクを取り除くようにしましょう。

 

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